読書・映像鑑賞 2019年3月

映画「日本の夜と霧」、「アメリカングラフィティ」
[2019/03/31]

今年、都倉ゼミで、1968年の学生運動の研究をするので、「日本の夜と霧」(大島渚監督、1960年)を観ました。「日本の夜と霧」は日米安全保障条約に反対する安保闘争をテーマにした作品で、公開からわずか4日後、上映が打ち切られた曰く付きの作品です。 内容は60年安保闘争中、新聞記者の野沢晴明と女子学生の原田玲子の結婚式が行なわれ、その中で登場人物が、安保闘争に関する思想の話をするという討論劇です。 学生運動はマクロな視点で語られる場合が多いのですが、登場人物がそれぞれ違った意見や価値観を持って運動に参加していたことが描かれていて面白かったですね。 1968年の暴力的な全共闘の学生運動と違って、1960年の学生は真面目に思想を持って学生運動に取り組んでいたことがわかります。 しかし、映画に挿入された「民衆のための変革思想」、「国家の暴力に抗する人民のための闘い」は、イデオロギーのない日本人の言葉としては実感がわきません。 一体、日本のどこに民衆がいるのか。理想ばかりを追い求めるリアリティの無い学生の言い分は稚拙です。

「アメリカン・グラフィティ」(ジョージ・ルーカス監督、1973年)は、1960年頃のアメリカの田舎町の若者を描いた青春映画です。 この映画の大ヒットによって、ジョージ・ルーカス監督の名が知られるようになりました。内容は、夏休みの高校生たちのワンナイトを描いたもの。 まだ無名だった若き日のハリソン・フォードが出ています。本当に若い。映画の中では60年代のロックンロール・ミュージックやヒット曲が流れ、時代の雰囲気を盛り上げています。 アメリカがベトナム戦争の泥沼に巻き込まれる前時代を描いた呑気な映画です。映画の最後にベトナム戦争で亡くなった登場人物のエピソードが出て来る場面がちょっと切ない。 「日本の夜と霧」も「アメリカン・グラフィティ」も1960年頃を題材にしていますが主題や作風が違うので、これが本当に同時代の出来事なのかと錯覚します。日本とアメリカの学生の違いが描かれていて面白かったですね。

写真:https://twitter.com/menghu_nankuru/status/786182926496960513
https://eiga.com/movie/42169/


映画「ハンナ・アーレント」、「フロスト×ニクソン」
[2019/03/24]

「ハンナ・アーレント」(2012年、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)が、ユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント(1906年~75年)の伝記ドラマです。アーレントは1961年、エルサレムで行われたアイヒマン裁判を傍聴、それをまとめて「イエルサレムのアイヒマン -悪の陳腐さについての報告」(1963年)として出版、世間から轟々たる非難を受けました。私自身はナチズムに似た偏狭なアーレントの考え方は好きではありません。鑑賞後は思った通り、後味の悪さを感じました。彼女はハイデガーの信奉者ですが、現象学が何かをを理解していない。世間が彼女を批判したのは、名声のある大学教授が実は馬鹿だったという幻滅を味わったからでしょう。何よりも哲学者であるアーレントがアイヒマンの本性を見抜けていない点が問題です。映画の中でナチスの協力したハイデガーが「私は子供だった」と後悔するシーンがあります。幼稚な弟子の傲慢さに比べると、ハイデガーはまともですね。

「フロスト×ニクソン」(2008年、ロン・ハワード監督)は、元アメリカ大統領リチャード・ニクソンとトーク番組の人気イギリス人司会者デビッド・フロストのトークバトルを中心に繰り広げられる人間ドラマです。フロストのトーク番組企画は「イギリスのコメディアンが大統領の陰謀を暴けるわけがない」とアメリカのテレビ局から相手にされず、フロストは自費で番組を制作することになります。2人の人生をかけたトークショーは真剣勝負そのもの、ニクソンは敗北しますが、彼の人間性を回復させた点で注目されるインタビューとなりました。硬派な題材のわりに人間味あふれる心理学的なエンターテイメントなドラマに仕上がっています。

写真:http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
https://eiga.com/movie/54322/


映画「13デイズ」、「JFK」、「風と共に去りぬ」
[2019/03/17]

先週は外出が多かったので「13デイズ」、「JFK」、「風と共に去りぬ」を観ました。「13デイズ」(2000年、ロジャー・ドナルドソン監督、ケビン・コスナー主演)は、1963年に起こった「キューバ危機」を描いた映画です。ソ連がキューバにミサイル基地を作ったのが発覚し、アメリカとソ連が核戦争の危機を迎えるという物語です。映画の中には、核戦争を阻止するためにケネディ政権が苦悩する様子が描かれています。現在、公表されたデータを見ると、アメリカの核弾頭2500に対して、ソ連が保持していた核弾頭は200。これを見ると圧倒的な戦力の差があるのですが、当時のアメリカはソ連の戦力を過大評価しており、根拠のない想像が核戦争の危機を招いたことがわかります。これが実際に起こった話だと思うと、ぞっとしますね。
「JFK」(1991年、オリバー・ストーン監督、ケビン・コスナー主演)は、ケネディ大統領暗殺事件の捜査に執念を燃やすジム・ギャリソンの行動を描いた作品です。大統領暗殺を巡る唯一の訴訟事件クレー・ショー裁判を中心に、ケネディ暗殺の内幕を推理するという構成になっています。一般的にケネディ暗殺は、オズワルドの単独犯行とされていますが、この映画では国家クーデター的な視点で推理を展開しています。リンドン・ジョンソンやCIA、マフィアが事件の黒幕として描かれていますが、真実はアメリカ公文書館のケネディ暗殺事件のファイル閲覧ができる2039年まで謎のまま。アメリカ史上、最も謎の多い事件なので、多くの説が発表されていますが、はたしてどれが本物なのでしょう。
「風と共に去りぬ」(1939年、ヴィクター・フレミング監督、クラーク・ゲーブル、ヴィヴィアン・リー主演)は、だれもが知っている映画史上に残る名作で、本作は1940年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞(ヴィヴィアン・リー)、助演女優賞(ハティ・マクダニエル・黒人俳優初)、脚色賞ほか特別賞を含め9部門を受賞しています。

アメリカの南北戦争を舞台に南部人の恋愛や人間模様を描いていますが、 スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)とレット・バトラー(クラーク・ゲーブル)の男女間の主導権争いは見ものです。オハラはいつまでもナルシズムで空想的な恋愛観から逸脱できず、最後の最後になって現実に目覚めます。最後の「タラへ帰ろう」というシーンは美しく感動的です。この映画が製作された1939年は、ヨーロッパで第二次世界大戦が起こった年。そのような状況の中、このような大作を作るのですから、アメリカの力は凄い。これでは日本も戦争に勝てませんよね。

写真:https://eiga.com/movie/1000/
https://www.amazon.co.jp/JFK-%E7%89%B9%E5%88%A5%E7%B7%A8%E9%9B%86%E7%89%88-DVD-%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%BC/dp/B00005HKXG
http://zzztjen12.hatenablog.com/entry/2015/07/08/234519


映画「バース・オブ・ネーション」、「グローリー」、「グローリー/明日への後進」、「エデンの東」、「理由なき反抗」、「ジャイアンツ」、ドラマ「ケネディ家の人々①~⑧」
[2019/03/10]

相変わらずアメリカ史のビデオを見ています。「バース・オブ・ネイション」(2016年)は監督と主演をネイト・パーカーが務めたアメリカの黒人解放関連の映画です。1800年代に起きた「ナット・ターナーの乱」を題材にターナーと信仰についての物語を展開しています。「グローリー」(1989年、エドワード・ズゥィック)は、アメリカの南北戦争における初の黒人舞台の活躍を描いた映画です。主演のデイゼル・ワシントンはアカデミー助演男優賞を獲得しています。当時、黒人に武器を渡すと反乱がおこると白人が考えていたので、彼らはなかなか武器を供与してもらず、戦争に参加させてもらえませんでした。彼らが参加した「ワーグナー要塞の攻略戦」を見て、白人は黒人を信用して黒人部隊の創設が許可されるようになりました。
「グローリー・明日への行進」(2014年、エイディ・デュヴァーネイ監督)」は1960年代、アメリカで公民権運動を主導したキング牧師の映画です。1965年のアラバマ州せるまからモンゴメリーへの行進(セルマの行進)を中心に公民権権運動の様子を描いています。前3本の映画は、黒人と武器の関係、反乱、戦争について描いていますが、「明日への行進」の主人公キング牧師は非暴力の改革を唱えています。「バース・オブ・ネイション」から、「グローリー/明日への後進」を連続して見るとアメリカの置ける黒人の歴史を知ることができます。
「エデンの東」(1955年、エリア・カザン)、「理由なき反抗」(1955年、ニコラス・レイ)、「ジャイアンツ」(1956年、ジョージ・スティーヴンス)は、ジェームス・デーン主演の映画史上に残る名作です。1950年代に機能主義を唱えた社会学者のタルコット・パーソンズの理論を参考にしながら、これらの映画を見ると、1950年代のアメリカの家族の問題、葛藤の様子がわかります。当時のアメリカ人家族は問題がってもきずながあったようです。それは大統領を生んだケネディ家にも言えるでしょう。「ケネディ家の人びと」(2011年、ジョン・カサー監督)はJ・F・ケネディの一族にテーマをあてた歴史ドラマです。J・F・ケネディは歴代のアメリカ大統領の中でも人気がある大統領ですが、このドラマではイメージよりも実体に近い内容が含まれています。この作品を見るとケネディ大統領は独裁者のような大統領だったことがわかります。ケネディ兄弟が強権を発動するので、CIAや南部出身のジョンソン大統領、マフィアなどは大統領の敵に回りました。これでは暗殺されても仕方ない。
メディアを使ってイメージ操作をして人気を得ても、実態があれでは問題があるのではないでしょうか。やはり政治家はイメージよりも政策です。

http://image.tmdb.org/t/p/original/56gbeVd4InisZXoXVnYpMEOoE0p.jpg
https://screenonline.jp/_ct/17127831
https://eiga.com/movie/81648/
http://www.cafe513.com/%E3%82%A8%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%9D%B1/
http://www.reviewanrose.tokyo/article/449006277.html
http://aoki.com/etc/recommend/post_315.html
https://blogs.yahoo.co.jp/shokodotmc/4400289.html


ドキュメンタリー「カラーで見るアメリカ史1920年①~1960年⑤」、「ヒストリーチャンネル アメリカ熱狂の70年代」、「映像の20世紀①~③」、映画「レボリューション・めぐり逢い」、「ニュー・ワールド」
[2019/03/03]

相変わらず、アメリカ関連のビデオを見ています。2年前のこの時期はイギリスに留学する前だったので、イギリス関連のビデオばかり見ていましたが、まとめてビデオを見ると、短期間で外国の様子が理解できます。ドキュメンタリーなどは、文献を参考にしつつ、繰り返し見ると理解度が深まってきます。ドキュメンタリーの中で面白かったのは、めちゃくちゃな文化が花開いた70年代を描いた「ヒストリーチャンネル アメリカ熱狂の70年代」。この番組には「スタジオ54」の話やホモや変態がたくさん出て来るので面白かったですね。
「レボリューション・めぐり逢い」(1985年)は、ヒュー・ハドソン監督(炎のランナー)、アル・パチーノ、ナスターシャ・キンスキー主演のアメリカ独立戦争を描いた戦争映画です。内容は子供が戦争に参加したために、父親も独立戦争に参加するという話です。戦いの中に親子や恋人の愛、子どもの成長などがちりばめられています。面白いのは、当時、少年は子供だという概念がなかったということ。10歳くらいでも戦場に出ていました。映画を見ていると先週、読んだ「ゴールデン・カムイ」と重なり、近代が戦いの時代であったことがわかります。残酷ですね。
「ニュー・ワールド」(2005年)は、「シン・レッド・ライン」を撮ったテレンス・マリック監督の作品です。内容は17世紀初頭、ジョン・スミスが「ヴァージニア植民地」にジェームスタウンを建設する話とジョン・ロルフがポカホンタスと結婚した話から成り立っています。
アメリカ最初の植民都市がどのように建設されたかがわかる歴史物語ですが、物語にドラマチックな部分がなく、ゆっくり進み、映像が美しいので見ていると心地よくなって眠くなってきます。退屈というよりも、当時のアメリカに流れる時間はこの映画のように行くりしていたのでしょう。ジェームズタウンの話を知っていても、実感が湧かなかったので、映画を見てイメージがつかめたような気がします。

写真:https://movie.walkerplus.com/mv3612/
https://filmarks.com/movies/34403
https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA0000806UM


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