読書・映像鑑賞 2018年9月

李禹煥 詩集「立ち止まって」
[2018/09/30]

「美術・音楽」欄で高橋睦郎さんのことを書きました。
高橋さんの朗読会の後、家に帰って父に感想を話していたら、「この詩集を上げよう」と言って李禹煥「立ち止まって」をくれました。
李禹煥さんが「立ち止まって」を刊行した理由は高橋睦郎さんの勧めがあったと「あとがき」に書いてあることを父親が思い出したようです。 李禹煥は日本を代表する現代美術家。造形作品の他、評論、詩作も行っています。造形作家が詩作を珍しくありませんが、本を刊行することは稀です。 本書を読むと、造形作家が詩人とは違った感性を持って詩を書いていることに気づきます。また、造形作品を思い浮かべながら詩集を読むと、李禹煥の世界がさらに広がっていきます。 言葉と物のコラボレーション、芸術家は様々な方法を使って自分お世界を表現するものなのですね。 それにしても、ここ1週間は吉増剛造、高橋睦郎、櫻井郁也など、芸術、詩に触れる週でした。


映画「ペイチェック」、「犬猫」、「人のセックスを笑うな」、「ニシノユキヒコの恋と冒険」
[2018/09/23]

ペイチェックは2003年に公開されたジョン・ウー監督のアメリカ映画です。主人公は機密保持のためにプロジェクト期間中の記憶を消されたエンジニア。 主人公は失われた記憶を取り戻すために、記憶を失う前の手掛かりをたよりに、警察や暗殺者から逃げながら捜査を続けます。 やがて、自分が開発した未来を覗くマシンがきっかけで世界が崩壊すること知り、マシンを破壊するために動きます。 記憶と未来予知、過去と未来をテーマにした作品。人工知能の発達によって、未来予測が可能になり、シカゴ警察などは犯罪を予測するシステムが導入されています。 しかし、こうした技術は「犯罪者予備軍」や「潜在的な敵」を生み出し、使い方によっては差別や争いの元になり得ると注意が喚起されています。 AIやテクノロジーは社会の発展に役立ちますが、注意して使わなければ大きな危険を伴う。技術をどう使うか、最終的には人間が判断をしなければならないと思いました。

西荻窪の「とびうおkitchen」で井口奈己監督の映画「犬猫」(2001)を見ました。井口奈己は「人のセックスを笑うな」(2008年)や「ニシノユキヒコの恋と冒険」(2014年)などの代表作がありますが、今回は井口監督のデビュー作「犬猫」のオリジナル版8mmを見ました。 8mmで撮影された映画を見るのは初めて。デジタルに比べ輪郭はぼやけますが、色に質感があるように感じました。 デジタル映像をフィルム風に加工することもできますが、どうしても不自然な感じになってしまう。フィルム映画には色や映像に特色があって、デジタルにはない面白さがあります。 上映会の後、井口監督と一緒にお酒を飲みながら話をしたのですが、上映会に参加した人たちは映画好きな人が多く、楽しい夜となりました。
映像美にこだわったからこそ、小津作品は永続的に人を魅了するのでしょう。ところで、フランス人建築家ル・コルビジェの作品と小津作品が似ていると感じるのは私だけでしょうか。


写真:https://lohaco.jp/product/L02458623/
http://espacebiblio.superstudio.co.jp/?p=415
https://mihocinema.com/hitono-warauna-34256
https://eiga.com/movie/79015/


映画「アンドレイ・ルブリョフ」、「ブルース・ブラザース」
[2018/09/16]

「アンドレイ・ルブリョフ」(タルコフスキー監督、1971年)は、15世紀のイコン画家アンドレイ・ルブリョフの生涯を描いた歴史映画で、タタール人の侵攻や内乱など中世ロシアの雰囲気が伝わる映画です。
映画のテ―マは「創造と破壊」、「贖罪」。劇中で画家が装飾を手掛けた聖堂が戦乱によって破壊され、それを復興する様子、それが戦乱のさなかに人を殺めたルブリョフの贖罪の姿に重ねられて描かれています。
物語の最後、聖堂のために鐘を完成させた青年に贖罪のために無言の行を行っていたルブリョフが口を開くシーンが印象的です。 画家(芸術家)の創造性について考えさせられる作品でした。
「ブルースブラザーズ」(ジョン・ランディス監督、1980年)はR&Bのミュージカル・コメディ。 同じミュージック映画でも、ザ・フーの「トミー」やピンク・フロイド「ザ・ウォール」とは全く雰囲気が違います。 歌い、踊り、悪いことばかりして警察に追いかけられます。 孤児院の存続のために奔走したり、教会でゴスペルが出てきたり、カントリーミュージックを聴くカウボーイハットの白人が出てきたり。 R&Bやソウル、ゴスペルなどの黒人音楽界の雰囲気が伝わってくる映画でした。 映画の中でカウボーイハットの白人に銃撃されるシーンは、イージーライダーにも通じるものがあり、映画を見ているとアメリカ西海岸の雰囲気を感じることができます。 派手なカースタントや演出が面白いシーンがたくさんあり、楽しい映画。笑えます。


写真:http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/andr.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AC%E3%82%A4%
E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A7%E3%83%95
https://eiga.com/movie/48946/


タルコフスキー「ローラーとバイオリン」、「惑星ソラリス」、「鏡」、「秋日和」
[2018/09/09]

先々週末、「ノスタルジア」を見て、タルコフスキーにはまってしまったので、「ローラーとバイオリン」、「惑星ソラリス」、「鏡」の3本。 「ローラーとバイオリン」は全ソビエト映画大学の卒業制作でタルコフスキーが作った映画です。 テーマは階級で、音楽家の少年と労働者の青年の友情を描いています。構図がきれいで水の表現などに実験的な映像が使われています。
「惑星ソラリス」(1972年)はポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの小説「ソラリス」をタルコフスキーが独自に解釈、新しい概念を挿入して作った映画。 物語は「知的な活動をする海」の探索。彼の映画は「人や自然に関する謎がテーマ」が多いのですが、死や海に知性を見出すところにタルコフスキーらしさがあります。 映画は全編、タルコフスキーの映像美で満たされているので美しく、長時間、名作絵画を見続けるような感じでした。
「鏡」(1975年)は作者の自伝的な要素に心理学、歴史学、文学を混在させた映画。時間の前後関係が交錯したり、家や自然が擬人的に表象されたりする抽象性の強い作品です。 娯楽映画とは違うタルコフスキーの映画は詩のようです。それがストーリー中心の映画を見続けてきた私にとって新鮮に映ります。 映像美や哲学的なテーマを極めた映画は、大衆受けや興行収入を前提としないソ連だったからこそ作ることができたのでしょう。 芸術性の高い映画を見るのは楽しいですね。
映像美といえば小津安二郎の映画。小津作品の撮影は主に厚田雄春が撮っていますが、カメラワークを学ぶために「秋日和」を見ました。 「秋日和」は美しい絵画や風景がふんだんに挿入されている映画で、この作品を日本画家の東山魁夷は「構図の端正、厳格な点と美しい色の世界」と評しています。
映像美にこだわったからこそ、小津作品は永続的に人を魅了するのでしょう。ところで、フランス人建築家ル・コルビジェの作品と小津作品が似ていると感じるのは私だけでしょうか。


写真:https://search.yahoo.co.jp/image/search;_ylt=A2RCCzKH45db5XIAngaU3uV7?p=%E3%80%8C%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%
E3%81%A8%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%80%8D&aq=-1&oq=&ei=UTF-8#mode%3Ddetail%26index%3D4%26st%3D267
https://ameblo.jp/irusutyuu/entry-12295763310.html
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20151122
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E5%BF%B5%E5%85%A8%E9%9B%86-4-%E7%A7%8B%E6%97%A5%E5%92%8C-%E6%B5%B7%E5%A4%96%E7%89%88/1002910148-0-0-0-ja
/info.html
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読書「世論」、映画「ソーシャルネットワーク」、「ノスタルジア」、「キングダム・オブ・ヘブン」
[2018/09/02]

「世論」を読みました。「世論」は1922年、アメリカのジャーナリスト、ウォルター・リップマンによって書かれた世論についての著作です。 構成は第1部の「序章」から始まり、「外界への接近」、「ステレオタイプ」、「さまざまな関心」……と続きます。リップマンは「人間は現実環境、疑似環境、行動の中で活動しており、それが固定観念化するとステレオタイプとなる。 それを克服するため、リップマンはニュースで真理の機能を補完させること」を提案しています。
この本は1922年に刊行された本ですが認識に関するリップマンの理論は、今も通じるもので、メディア論の基礎になるような考え方がや理論が示されており、面白かったです。 「ソーシャルネットワーク」(デヴィット・フォンチャー監督、2010年)はフェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグがフェイスブックを創設するまでを描いた作品。 この映画は数々の賞を受賞し、世界的にヒットしました。興味深かったのはフェイスブックがどのようなきっかけで作られたか、それをビジネスにする人たちの争い、ハーバート大学の構造などで、天才がどのような環境で登場するかを理解できました。 この映画を見ていると、保守的な日本人の発想では世界に太刀打ちできないようです。相手がユダヤ人なのだから、なおさらですね。7月にフェイスブックの株価が1割暴落して話題になりましたが、まだまだフェイスブックは世界的に力を持っているようです。
「ノスタルジア」は1983年公開のアンドレイ・タルコフスキーの映画です。独特の映像美は芸術性に富み、第36回カンヌ国際映画祭で「創造大賞」を受賞しました。 一世を風靡した名作で他の映画とは全く違う雰囲気がします。私はこれまでタルコフスキーの作品を見たことがなかったのですが、このような芸術的な映画体験をしたのは初めて。 構図や色、特に空気や水の表現が美しく、一コマ一コマが絵のようにになっており重厚感のある作品でした。
娯楽映画とは違う。 映画でも深みがある芸術体験はできることを知りました。
「キングダム・オブ・ヘブン」(リドリー・スコット、2005年)は、12世紀のエルサレムの十字軍、ボードゥアン一世の治世からヒッティーンの戦い、エルサレム陥落までを描いた映画です。 「グラディエーター」や「大聖堂」など歴史大作をたくさん作っているリドリー・スコッならではの映像で、ヴァーチャル映像を使っていても戦闘シーンがリアルで迫力があります。 最近は史実に近い歴史的な映画作品が作られているので楽しい。リドリー・スコットが撮る次回作も楽しみです。

写真:https://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/0d7086a9b48839de90808fc41e1a2674
https://www.cinemawith-alc.com/2013/11/sn-3.html
https://www.yodobashi.com/product/100000009002228141/
https://www.biccamera.com/bc/item/3052804/


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