読書・映像鑑賞 2018年5月

映画「天国と地獄」、ドキュメンタリー「NEWSな2人」
[2018/05/27]

「天国と地獄」(1963年)は黒澤明監督がエド・マクベインの小説『キングの身代金』に触発され、映画化した作品です。 物語は貧乏な研修医が金持ちの子供を誘拐して身代金を要求するのですが、誘拐した子供が違っていたり、会社のM&Aの話が絡んだりする奇想天外なサスペンス映画です。 黒澤はこの映画を「当時の誘拐罪に対する刑の軽さ」(未成年者略取誘拐罪で3ヶ月以上5年以下の懲役〈刑法第224条〉、営利略取誘拐罪で1年以上10年以下の懲役〈刑法第225条〉)に対する憤り」でこの映画を作ったといわれています。 この映画が公開された翌4月には都内を中心に誘拐事件が多発しましたが、この問題は国会でも取り上げられ、翌年、刑法が改正(「身代金目的の略取(無期または3年以上の懲役)」を追加)のきっかけとなりました。
この映画が公開されたのは1963年ですが、現在でも日本の社会格差は解消されておらず、子どもの貧困率は6人に1人となっています。 派手な都市開発、好景気だと謳っている割に実態は大きく違っているようです。
この映画を見た後、金曜日の深夜、ТBSで放映されている「NEWSな2人」を見ました。今回のテーマは「密売…依存…覚醒剤…薬物問題の“今の迫る」。 日本一のドヤ街、大阪市西成区で行われている覚醒剤取引の現状をレポートしていました。現場での撮影なので緊張感が伝ってきます。 「天国と地獄」でも覚醒剤に侵された人々が住む横浜の町が登場しますが、ドヤ街の環境は今も昔も変わっていない。 日本では身近なところで覚醒剤やドラッグを入手できます。問題の根源が社会格差、貧困問題がある事は間違いありません。

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映画「レディ・プレーヤー1」、「男はつらいよ ハイビスカスの花」
[2018/05/20]

スティーブン・スピルバーグ監督の「レディ・プレイヤー1」を観ました。 現実から目をそらし、ヴァーチャルな世界に没入しているオタク青年ウェイド・ワッツが、あるゲームをきっかけに現実的に生きることの大切さに気付く物語です。 日本では2017年のヴァーチャル・リアリティ(VR)元年以降、仮想現実やスマートフォン、SNSの普及で生身の会話や生活にリアリティがなくなりつつある感じがします。 この作品はそのような状況に警鐘を鳴らす社会的な作品になっていました。 映画に登場するゲーム作者のハリデーの「昔はゲームが好きだった。ただのゲーム(遊び)だったから」というセリフが印象的です。
映画には「シャイニング」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「ゴジラ」、「ガンダム」、「AKIRA」など、80年代サブカルチャーへのオマージュがちりばめられています。 アニメ、ゲーム、映画の多種多様なキャラクターが一同に会して戦うシーンはどこか滑稽でエイリアンがたくさん出てきた昔のスターウォーズを彷彿とさせます。 それを見ているとスピルバーグの映画製作に対する情熱やクリエーターたちへの敬意を感じました。スマホの動画サイトやビデオではなく、映画館で見るべき映画でした。

週末、DVDで「男はつらいよ ハイビスカスの花」を観ました。本作は後半の男はつらいよシリーズ24本の中で一番、人気がある作品です。 寅さんの映画を観るのは初めてですが、登場人物の性格や行動が喜劇的で思った以上に面白かった。 この映画がシリーズ化され、なぜ昭和を代表する国民的映画になったかを理解することができます。 SNSがないせいか、昭和時代の日本は現在と比べるとのんびりした感じ。寅さんの性格と地方の風景が相まってどこか懐かしさを感じさせてくれる映画でした。

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NHK 「東京ディープ 三田」、「ウィンストン・チャーチル」、「静かなる決闘」、「フラガール」
[2018/05/13]

月曜日、NHKプレミアムで放送されている東京ディープで「三田」が放送されました。「三田」には慶應大学OB、三田商店街の方、岡原先生とゼミ生、三田祭実行委員や応援指導部の学生など、たくさんの慶應大学関係者が出演していました。ちなみに三田の語源は大学近くにある御田神社の御田。面白いですね。
火曜日の学校帰りに映画「ウィンストン・チャーチル」(監督ジョー・ライト、2017年)を観に行きました。主演のゲイリー・オールドマンが第90回アカデミー主演男優賞を獲得した、映像もがとても美しい作品です。物語はチャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの4週間を描いた歴史物。貴族出身のチャーチルは庶民のことなどまったく知らないのですが、庶民の力を借りて首相に就任、戦争に勝利したことは歴史の皮肉としか言いようがありません。階級社会がはっきりしているイギリスらしい。ちなみに、私は昨年5月、チャーチルが生まれ育ったブレナム宮殿に行きました。1年が経つのは早いですね。
週後半は、黒澤明の「静かなる決闘」(1949年)、李相日の「フラガール」(2006年)を観ました。最近の私の主題は「人情のある映画を見ること」。 「静かなる決闘」は理不尽な世界で人間味のある医師が葛藤する話。黒澤監督の映画はロケ地の迫力と登場人物の強い人間描写に支えられています。
この映画は戦後の雰囲気が色濃く残る中、現実的に日本人がどのように生きていくか、生き方を教示する映画となっていました。
「フラガール」は2006年、李相日監督の作品。この年、第80回キネマ区報日本映画ベスト1位、第30回の日本アカデミー最優秀作品賞を受賞しています。 この映画を見ていると、人情というのは人や家族のためにある情であることがわかります。 自己本位な生き方をする現代人にとって、忘れがちな人情を映画からよみがえらせることが大切ですね。 「フラガール」は監督、脚本、俳優が一体化した上出来の1本でした。

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「メディア・オーディエンスの社会心理学」、「社会学の歴史Ⅰ」、「新しい家族社会学」、映画「野良犬」、「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」、「レッド・ドラゴン」、「ハンニバル・ライジング」
[2018/05/06]

「メディア・オーディエンスの社会心理学」は、「コミュニケーション学Ⅰ」の教科書です。
この本には新聞、テレビ、インターネットなどマス・メディアにおける社会心理学についての論文が章ごとに書かれています。 メディア論の中でも、ニュースやテレビに関する研究は長い間行われてきたので、「議題設定効果」、「プライム効果」、「ニュースフレーム」など、ニュースが視聴者に影響を与える影響を説明した理論がいくつもあります。 「議題設定効果」は、簡単に言えば、ニュースで報道されることが社会的な関心事になる、「プライム効果」は先に流れたニュースが、後の情報に影響を与えるというものです。 こうした理論は実際にニュースを見た時、他の社会学の授業の内容にも応用できるので面白いですね。 ただ、インターネットについては、まだ理論的な研究が進んでいないようで、現象の説明や倫理、制度的な問題の指摘にとどまっています。
「社会学の歴史Ⅰ(奥村隆著)」は社会学の入門テキストです。2年前、浜先生の授業を取ったのですが期末の論文で不可を付けられてしまいました。 社会学史は必修なので単位を取らないと卒業できません。 この本を読んだ時、1年間、留学して社会学から遠ざかっていたので、いろんなことを忘れていることに気づき、社会主義が革命を起こす国のシステム、 時代が進むにつれユダヤ人の社会学派が力を持つことを再認識しました。ところで、ロンドンでマルクスの墓、パリでオーギュスト・コントの墓に行ったのですが、実際に墓参りをすると社会学をより身近に感じることができます。
「新しい家庭社会学(森岡清美、望月嵩著)」は1983年に出版された家庭社会学の有名な入門書。 まだ、昭和の価値観が残っていた時代の著作なので、現在に当てはまらない部分もありますが、入門書として読むと家庭社会学とは何か、概要をつかむことはできます。 最近、若者が恋愛をしない理由の一つに経済格差があります。 家庭と経済は結びついているので経済力によって家族形成ができるかどうかが、現時点の問題です。

先週は黒澤明の「野良犬」の他、「ハンニバル・レクター」の映画を4本続けて見ました。
「野良犬」は黒澤明が1949年に作ったサスペンス映画です。 拳銃を盗まれた若い刑事がベテラン刑事と共に終戦直後の町中で犯人を捜しまわるというストーリーとなっています。 この映画を見るきっかけになったのは、「映像メディア論」の授業で「裸の町」が課題として出題されたことでした。 「野良犬」は「裸の町」に影響を受けているという批評があり、冒頭のナレーションや町中での撮影シーンを見ると、なるほどなと思わせる部分があります。 「野良犬」の闇市のシーンは隠しカメラで撮影されたのですが、やっぱり本物は迫力がある。戦後の熱気が籠った良作です。

「羊たちの沈黙(1991年、ジョナサン・デミ)」、「ハンニバル(2001年、リドリー・スコット)」、「レッド・ドラゴン(2002年、ブレット・ラトナー)」、「ハンニバル・ライジング(2007年、ピーター・ウェーバー)」は、トマス・ハリスの小説を映画化した作品です。 アンソニー・ホプキンスの演じる天才的な頭脳を持つカニバリストのハンニバル・レクターが主人公で、数々の何事件を解決していきます。 ゴールデン・ウィークで毎晩、映画を見ることができたのでシリーズを全部見ました。感想は作品ごとに監督が違うので異なった雰囲気を持つ作品に仕上がっているということです。 映画の中でハンニバルが芸術に造詣が深いことが描かれています。それが映画に深みをもたらしている。特に「ハンニバル」は、フレンツェが舞台なので芸術的な感じが良く出ています。芸術に造詣が深い人物を主人公にした映画が日本では作ることができない。 人情物はたくさんの秀作があるのにビスコンティのようなエリート層の映画はありません。やっぱり、日本は庶民的な性質を持つ国民なのかな。 芸術も勉強しなければならないことを教えてもらった映画でした。

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