読書・映像鑑賞 2018年4月

 映画「裸の町」、「踊る大紐育」、「人情紙風船」、「丹下左膳百万両の壺」、「パルプ・フィクション」
[2018/04/29]

「映像メディア論Ⅰ」でゴールデンウィーク中、「裸の町(1948年公開)」と「踊る大紐育(1949年公開)」の2本を観て、批評を書く課題が出ました。 「裸の町」はモノクロのフイルム・ノアールで緊張感が漂う作品、「踊る大紐育」はテクニカラーのミュージカル、娯楽作品です。 2作品の共通点はスタジオ撮影とニューヨーク・ロケ撮影で作られた作品で、それまでスタジオ中心に作られていたハリウッド映画とは大いに異なっています。 両作品とも戦後すぐに作られた映画ですが、サスペンス、ミュージカルのスタンダードとなっています。
さらに先週は「映像メディア論Ⅰ」の前期課題の題材となっている山中貞夫監督の「人情紙風船(1937年)」、「丹下左膳百万両の壺(1934年)」を観ました。 両方とも、日本の下町に正義や人情の残っている時代の映画です。昨今、日本では生活感のある下町が消えて、近所とのコミュニケーションが乏しい町が出現している感じがします。 人々は直接の会話よりもSNSを使ってコミュニケーションをとっている。昔のように近所の人が生活に介入してくることが良いかどうかはわかりませんが、現代社会は人間関係が希薄化していることを2本の映画を見て感じました。 戦前は下町に、直接的な人間関係や人情が残っていたようです。先週、「鴛鴦歌合戦」を見た時にも書いたのですが、「映像メディア論Ⅰ」を取っていなければ、このような映画を見る機会はなかったでしょう。それにしても28歳の若さで亡くなった山中貞夫は天才ですね。 生きていれば小津や黒澤同様、世界的な名監督になっていたでしょう。惜しいですね。
週末、クエンティン・タランティーノ 監督の「パルプ・フィクション(1994年)」も観ました。 こちらはハチャメチャな映画。ナンセンスな会話が絶妙で、現代社会の言葉遣い、コミュニケーションの危うさが表現されています。 「人情紙風船」や「パルプ・フィクション」にはヤクザ物が登場しますが、どちらも一癖ある人情家。これらの映画を見ると、映画の主題が人情や感情であることがわかります。 それにしても1週間で5本、今週はよく映画を観ました。

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映画「書を捨てよ、街に出よう」
[2018/04/22]

映画「書を捨てよ街に出よう」は1971年に公開された映画。寺山修二が主宰した「天井桟敷」の同名の小説、戯作を映画化した作品です。 映画の冒頭、暗闇の中に一人主人公が映しだされ、「映画館の暗闇の中でそうやって腰掛けて待っていたって何も始まらないよ…」と観客は主人公になじられます。 画面が緑色だったり、パンクな音楽が流れてきたり、脈絡のないシーンが挿入されたり、映画には実験的な手法が用いられています。 映画の中には、性器の形をしたサンドバッグをぶら下げるパフォーマンス(ハプニング)が登場し、 映画を見ると当時流行した前衛芸術や、混沌とした街、地方から来た若者の鬱屈した様子など1970年代の雰囲気がよくわかります。 混沌とした中で生きようとする人間の生命力のようなものが描かれています。 老婆の娼婦が「何か、御用?」としゃがれた声でいうシーンは圧巻。岡原先生のいう「生の社会学」ですね。

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「慶應大学マインドフルネス教室へようこそ!」、「サイコ」、「鴛鴦歌合戦」
[2018/04/15]

「慶應大学マインドフルネス教室へようこそ!」
樫尾直樹 著

火曜日にある「宗教社会学Ⅰ」の準備として「慶應大学マインドフルネス教室へようこそ! 樫尾直樹著 国書刊行会」を読みました。 この授業は眼想(メインドフルネス)を実践する授業なので、あらかじめテクストを読んで内容を理解しなければ参加できません。 授業では1年半ぶりに樫尾先生と会ったのですが、とても元気そう。フランスでたまたま映したUFOの写真を見せると喜んでいました。
ところで、私はマインドフルネスを実践した翌日、原因不明の熱が出て、お腹を壊しました。 医者に行くと、なぜ熱が出るのか原因がわからないとのこと。 マインドフルネスを実践した初心者の場合、そのような症状が起こることがテクストに書いてあったので……、翌日には平熱に。 来週の授業で樫尾先生にこの件について質問してみようと思っています。

今週はヒッチコックの「サイコ(1960年)」とマキノ雅弘の「鴛鴦歌合戦(1939年)」を観ました。ヒッチコックの映画を初めて見たのですが、さすがに名匠、「サイコ」はとても面白い作品でした。
「鴛鴦歌合戦」は昭和14年のオペレッタ時代劇の映画。 この映画を見るきっかけになったのは、月曜日に履修する「映像メディア論Ⅰ」で、この映画と「丹下作善百万両の壺」、「人情紙風船」を見て批評を書く課題が出たこと。 大学の授業が無ければ、このような古い映画に観る機会はなかったはずです。 大学の授業が面白いのは、自分の知らない分野の世界と出会いを演出してくれること。このような出会いがあるから大学は楽しいですね。
「鴛鴦歌合戦」は戦時体制の中で作られた感じがするわりに、明るく楽しい映画。 公開当時は傑作とは考えられていなかったのですが、現在ではオペレッタ時代劇の傑作として評価されています。 時代を象徴する特徴的なメロディーが耳に残ります。現代映画とは違う面白さがあるので機会があればご覧ください。 それにしても、この映画に出演している志村喬、歌が上手い。

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「ストーリー・オブ・フィルム アン・オデッセイ 1~15」
[2018/04/08]

「ストーリー・オブ・フィルム アン・オデッセイ(2011、イギリス)」は昔の映像や関係者などのインタビューを交えて映画の歴史をたどるドキュメンタリー番組です。 エピソード1の「映画の誕生」からエピソード15「映画の未来」まで通して見ると映画史の概要を把握することができます。 番組を見ると各国の名監督、名作の話、製作上の秘話や新しい技術の導入などを知ることができて映画を多角的に考察することができます。 番組中に小津安二郎、黒沢明、溝口健二、大島渚、今村晶平など日本の監督も登場するのですが、彼らが世界の映画に与えた影響が多きことに驚きました。 それは幕末、浮世絵が世界の美術関係者に衝撃を与えたことに似ています。ここでも日本人の独創的な平面的感性を感じることができます。
ところでこの番組を見ていて、映画好きな私でも昔の映画を意外と見ていないことに気づきました。 リュミエール兄弟の家や小津安二郎やトリフォーの墓に行ったことはあっても、ヒッチコックやベルイマンの作品などは1本も見ていないので、自分が映画好きかどうか疑わしい。 この番組を参考にしながら、今年は1本でも多くの名作を観ようと思います。

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芸術の理論と歴史1~15(放送大学)、100分deメディア論(NHK)
[2018/04/01]

イギリスとフランスに留学して大量の芸術作品に接しました。それを学術的にまとめるために「芸術の理論と歴史1~15(青山昌文、放送大学)」を見ました。 青山昌文は放送大学の美学・芸術学・哲学を担当する教授で、この講座の他に多数の講座を持っています。それがどれも面白い。 以前、この講座を見たのですが、その時は青山が芸術作品について話をいても今一つ実感がわきませんでした。 しかし、留学で各地を回り、教会や芸術作品に接した後だと、青山の話す内容をスムーズに理解できます。 自分が現地で芸術作品を見て実感した体験や感想は青山の話す内容ととても似ています。青山自身、世界各地を回って、相当な量の芸術作品を見ている感じがします。 「百聞は一見に如かず」という諺もあるように、芸術を理解するには、やはり実体験が一番ですね。

「100分deメディア論(NHK)」は、「報道と政治」をテーマにした著作4冊(ウォルター・リップマン『世論』、エドワード・サイード『イスラム報道』、 山本七平『「空気」の研究』、ジョージ・オーウェル『1984』)を紹介しながら議論する番組。紹介された本の中でも山本七平の『「空気」の研究』というのが特に面白そうでした。 城壁のある西洋では、人間の考え方の根本にも境界があって、境界の内と外の対話(神との契約や、城壁の外と内、自己と他者の対峙、人々の関係性)で世界をとらえますが、城壁のない日本に住む人々は、境界線の概念が乏しく、都市は無限に広がり、自己の想像(テリトリー)も無限に拡張されていく。 「空気」というのは一見すると他人の意見のようですが、実は「みんなはこう思っているのだろうな」という世界に対して拡張された自己幻想でしょう。 境界のない日本人ならではの思考です。番組では「世論形成」が重要なキーワードになっていましたが、西洋はともかく、日本で西洋式の「世論」や「議論」が果たして成り立つのか大いに疑問が残ります。 日本人の場合、雰囲気を醸し出しているだけなのかもしれません。 他の著作もメディアについて勉強になるのでこれから読もうと思います。その前にとりあえず、映画「1984」を見よう。

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