読書・ビデオ鑑賞 2017年10月

映画 「ガスパール/君と過ごした季節(海辺のレストラン)」
[2017/10/29]

「ガスパール/君と過ごした季節(海辺のレストラン)」は1990年に、アルジェリア出身の監督トニー・ガトリフ(1948年~)が製作した映画。 ローヌ県ブーシェの海辺が舞台となっているハートフルな作品です。
ドロップアウトをした頑な性格だが優しい南仏の男性2人と、捨てられたおばあちゃんの交流の物語。 パリ人をフランス人だと思っている人は、この映画を見ると、プロヴァンス人のお人好しさに驚くでしょう。 経済中心の北フランスの人から見たら、これのどこが幸せなのだというような物語ですが、経済とは違う価値観を持つ人の人生感が描かれています。
主人公に限らず、多くのフランス人は家庭に問題を抱えており、そのような人たちが集まって新しいコミニティを築く、 最終的に人間に必要なものは社会的名声や経済力ではなく、親しい友人や喜怒哀楽、情感であることをこの映画は教えてくれます。 地中海の浜辺に並べられたカラフルな椅子がポップで、哀愁を帯びた音楽にも癒されます。 勧善懲悪、ハッピーエンドで終わるアメリカ映画とは違う、感性を揺さぶってくれる魅力的な作品です。 先週、カマラグに行ったのですが、主人公たちがその辺を歩いているような感じがしました。


エグ・モルトのレストランで食べたムニュ


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映画 「愛と宿命の泉 フロレット家のジャン」、「愛と宿命の泉 泉のマノン」
[2017/10/22]

「愛と宿命の泉 フロレット家のジャン(1986年)」、「愛と宿命の泉 泉のマノン(1986年)」は、マルセイユの東にあるオーバニュ出身のマルセル・パニョルの小説をクロード・ベリ(1934年~2009年)が映画化した作品です。 「マルセルの夏」同様、リュベロン地方でロケが行われました。
物語はプロバンス地方に移住してきた1家3代の宿命を描いたお話。 プロヴァンス地方は泉が少なので、泉が物語の中でキーワードになっています。 主人公(ジェラール・ドパルドュー)の叔父(イブ・モンタン)は本当に悪い奴で、フランス人農夫の野蛮さ、恐ろしさを感じさせます。 「愛と宿命の泉 フロレット家のジャン(1986年)」の最後は悲劇的に終わるのですが、ハッピーエンドや勧善懲悪に慣れている日本人が結末を見た時、複雑な気分になるはずです。 フランス映画は凄いですね。 とはいえ、最後は若者たちが幸せになり、悪事を行った大人が悲劇を背負うことになるので、後味も悪くはありません。 イブ・モンタン、J・ドパルデゥー、E・ベアール、D・オートゥイユが好演した2つの作品は人間性の一面を深く描いており、国際的にも好評を博しました。 同じ原作者でも、「マルセルの夏」と「愛と宿命の泉」は作風が大きく違います。
映画の最後にイブ・モンタンがプロヴァンス語をしゃべります。私はこの映画で初めてプロヴァンス語があることを知りました。 ナポレオンが登場するまで、フランスは地方自治が中心の連合体でした。南フランスのフランス語には強い訛があるのはそのせいでしょうか。




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ピーター・メイル 「南仏プロヴァンスの12か月」
[2017/10/15]

「南仏プロヴァンスの12か月」は、イギリス人作家ピーター・メイル(1939年~)が1989年に出版したエッセイ、紀行文です。燦燦と降り注ぐ太陽、のんびりと流れる時間、美味しいワインと料理、本を読むだけでプロヴァンスの空気を感じることができます。 この本の出版によって世界中の人がプロヴァンスに魅了されました。カントリー文化の原点のような本です。 「南仏プロヴァンスの木陰から(1991年)」は、シリーズ物の続編。
これらの本の中にはプロヴァンスの自然の美しさだけではなく、フランス人との交流が描かれています。 家を買うのに大量の書類が必要だったり、仕事を頼んでも職人が無断で何処かに出かけてしまったり、食品を執拗に吟味したり、フランス人の気質が克明に描かれています。 実際、私もここでフランス人気質に戸惑う場面に何度も遭遇しました。最初の週、大学の事務局で「お昼ご飯の時間だから」と言って、目の前の書類を受け取ってもらえませんでした。 マニフェストも毎週やっているし……。お昼休みを十分に取る感覚は、残業代欲しさに時間外でもだらだらと仕事を続ける日本人には理解できないでしょう。

日本人はフランスと言えばパリを連想しますが、「南仏プロヴァンの12か月」を読むと、パリとは違う文化が南フランスにあることが理解できます。 南フランスの最大の魅力は自然と一体感のある生活と風景の美しさ。この本を読んで興味がわいたら、プロヴァンスを旅してください。

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ゴッホの映画、「Logique impertubable du fou(動じない気狂いの論理)」
[2017/10/08]

「炎の人ゴッホ」 1956年
ヴィンセント・ミネリ監督

「ゴッホ」 1990年
ロバート・アルトマン監督

「ヴァン・ゴッホ」 1991年
モーリス・ピネラ監督

ゴッホの生涯は何度も映画や舞台で再現されています。 映画では「炎の人ゴッホ(ヴィンセント・ミネリ監督、1956年)」、「ゴッホ(ロバート・アルトマン監督、1990年)」、「ヴァン・ゴッホ(モーリス・ピネラ監督、1991年)」などがあります。 「炎の人ゴッホ」は全般的なゴッホの人生、「ゴッホ」はゴッホと弟テオとの関係、「ヴァン・ゴッホ」はゴッホの最晩年を描いた作品。どの映画も監督の意向、脚色が入っているのでゴッホの性格の解釈はばらばら。 ゴッホの複雑な性格が作品の題材になるのでしょう。普通の人は自分耳など切りませんからね。三本の中でも「ゴッホ」を撮ったロバート・アルトマンは個性が強いので見ごたえのある作品となっています。 映画のオープニングは「ひまわり」のオークションのシーンから始まるのですが、どんどん値段がつり上がっていく。それと対照的にゴッホとテオの生涯は暗く悲惨に描かれています。ちなみにゴッホの生存中、売れた絵はモンマジュールで描いた「赤い葡萄畑」という絵1枚だけ。
プロヴァンスに来ると、ゴッホを身近な存在として感じることができます。ゴッホは病気がちでもプロヴァンスで楽しい生活を送っていたのではないかと思います。発作が出た時は大変だったでしょうが、それ以外は楽しかったはず。 本当に狂っていたら絵など描けませんからね。映画の中でもプロヴァンスの自然は美しく表現されています。3本とも美術と自然が楽しめる作品です。

10月6日(金)にジャックリーヌさんと、精神病院を舞台にしたコメディ「Logique impertubable du fou(動じない気狂いの論理)」を観に行きました。 フランス語はほとんどわからないのですが、表情や身振り手振りでニュアンスが伝わるので面白い芝居でした。 演出や構成も綺麗で、フランス人は色や空間の使いかたがうまいですね。役に応じて話し方や雰囲気を変えたり、言葉が分からなくても伝えたいことが伝わる。

を見ると、そのニュアンスが伝わると思います。面白いですよ。

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ゴッホ生前中に売れた1枚の絵「赤い葡萄畑」
モンマジュールで描かれました

ゴッホのベッド

サン・ポール・ド・モーゾール修道院

「Logique impertubable du fou」

アルフォンス・ドーデ 「風車小屋だより」
[2017/10/01]

アルフォンス・ドーデ

ドーデの風車

先週、フォンヴィエイユに行く前にドーデの「風車小屋だより(1869年刊)」を読みました。
この小説はプロヴァンスを舞台にした30編からなる短編集。
19世紀後半のプロヴァンスの生活を中心に民話や職業、動物相などに皮肉やユーモアが加味され、南仏の人間模様が活き活きと描かれています。
その中で第7話「アルルの女」は有名な組曲の原作。フォンヴィエイユを歩いていると、小説に出てくる人物たちがそこにいるような感じがします。 それだけ「風車小屋だより」はリアリティのある小説だといえるでしょう。南フランスの人たちは地元に誇りと愛着を持っており、いまだに「風車小屋だより」を読み継いでいます。
南フランスを題材にした映画の多くは「風車小屋だより」のイメージを踏襲しているのではないでしょうか。

近年、ピーター・メイルの「プロヴァンスの十二か月」がプロヴァンスを紹介する作品として有名ですが、こちらはおしゃれで、日本人が好きなカントリー風。 それよりも「風車小屋だより」は土着的な時代性が感じられます。雑貨と骨董品の違いかな。

プロヴァンスは古代、中世、近代、現代に渡って様々な表情を見せてくれますが、「風車小屋だより」は近代プロヴァンスを理解するうえで欠かせない作品です。 歴史的な重相感があるからこそ、プロヴァンスは魅力的なのだと思います。

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ドーデ 「風車小屋だより(1869年刊)」


フォンヴィエイユ

モントーバン城