先週、フォンヴィエイユに行く前にドーデの「風車小屋だより(1869年刊)」を読みました。
この小説はプロヴァンスを舞台にした30編からなる短編集。
19世紀後半のプロヴァンスの生活を中心に民話や職業、動物相などに皮肉やユーモアが加味され、南仏の人間模様が活き活きと描かれています。
その中で第7話「アルルの女」は有名な組曲の原作。フォンヴィエイユを歩いていると、小説に出てくる人物たちがそこにいるような感じがします。
それだけ「風車小屋だより」はリアリティのある小説だといえるでしょう。南フランスの人たちは地元に誇りと愛着を持っており、いまだに「風車小屋だより」を読み継いでいます。
南フランスを題材にした映画の多くは「風車小屋だより」のイメージを踏襲しているのではないでしょうか。
近年、ピーター・メイルの「プロヴァンスの十二か月」がプロヴァンスを紹介する作品として有名ですが、こちらはおしゃれで、日本人が好きなカントリー風。
それよりも「風車小屋だより」は土着的な時代性が感じられます。雑貨と骨董品の違いかな。
プロヴァンスは古代、中世、近代、現代に渡って様々な表情を見せてくれますが、「風車小屋だより」は近代プロヴァンスを理解するうえで欠かせない作品です。
歴史的な重相感があるからこそ、プロヴァンスは魅力的なのだと思います。
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