読書・ビデオ鑑賞 2017年7月

映画 アラン・レネ「夜と霧」
[2017/07/30]

「夜と霧(1955年、仏)」は第二次世界大戦時、ナチスがアウシュヴィッツのユダヤ人強制風要所でユダヤ人を虐殺した事実を告発したドキュメンタリー映画。 監督はアラン・レネで、32分という短い作品ですが、コラージュを使ったモノクロとカラーが交互に往還する斬新な手法を用いています。 ホロコーストが題材ですが、内容や映像が生々しく、詩的、衝撃的です。映画というよりも映像作品と言ったほうがしっくりくる感じがします。 公開された1996年は第二次世界大戦から10年余り、観客は現在よりもっとリアリティを持って、この映画を観たのでしょう。 この作品の後、レネは1959年に「ヒロシマ・モナムール」で原爆の問題を作品化しています。
2017年7月26日は、「相模原障害者施設殺傷事件」が起こってから1年が経ちます。しかし、容疑者・植松聖はいまだに自分の行為を正当化しているようです。 彼の主張の裏には障害者の人格を認めない、ナチズムに通じる優生思想があります。マスコミが騒ぐだけでは問題解決にはなりません。 彼がなぜ障害者を殺さなければならなかったかという理由を隠さずに公判を実施しなければ、問題の本質は見えないでしょう。 人間が他者を認める寛容の精神を持つようになるには膨大なエネルギーと時間がかかりそうです。

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映画 「気狂いピエロ」、「勝手にしやがれ」
[2017/07/23]

先週はフランス・ヌーベルバーグの代表作ともいえるジャン・リュック・ゴダール監督の「気狂いピエロ(1965年)」を見ました。本作は他のゴダール作品同様、脚本と呼べるものはなく、ほとんどのシーンが即興で演出、撮影されています。 1960年代の映画の記号、セリフ、色調がスピード感あふれる演出で表現され、独特の映像作品に仕上がり、ランボーの詩「永遠」での朗読で終わるラストシーンは有名です。 ヌーベルバーグの作品は現在では古典的な作品のように考えられていますが、実験的で創造的な感じは時代が経っても色あせていません。 ストーリーを追うよりも映画自体の存在意義を問うているので、ヴァーチャルな現代映画よりも、ある意味、新鮮な感じがします。 存在感がある映画は、時代を経ても人々の心を打つのでしょう。

「勝手にしやがれ(1959年)」はゴダール初の長編作品。 こちらは手持ちカメラの使用、即効演出、ジャンプカット、突然のクローズアップなど、さまざまな映画技法を使って斬新な作品に仕上がり、 アメリカン・ニューシネマに多大な影響を与えました。 本作の発表で、ゴダールをヌーベルバーグの代表的な監督となりました。 ちなみに、甲斐バンドの初期作品「ポップコーンほおばって」という曲の中に「映画を見るならフランス映画さ」という歌詞があります。 この歌詞のモデルは多分、「気狂いピエロ」か「勝手にしやがれ」。映画館で映画を見ることが青春だった時代を想像させます。うらやましい。

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映画 「ヒロシマ・モナムール」、「去年マリエンバードで」
[2017/07/16]


7月に入って、フランス語の本格的に再開しました。2週間勉強するとフランス語の感覚も甦ってきます。 この調子で勉強すれば9月にフランスに行っても初歩的な日常会話には困らないだろうと感じています。 先週は大学で「パーフェクト・レボリューション」を、家でアラン・レネ監督の「ヒロシマ・モナムール(1959年)」「去年マリエンバードで(1961年)」を見ました。 「ヒロシマ・モナムール」は世界初の原子爆弾の被害地・広島で悲惨な戦争体験を持つ日本人男性とフランス人女性の1日の恋愛を描いた作品。 アラン・レネ監督の第1回長編劇場作品で、上映当時は物議も醸しましたが、後に世界的な評価を受けるようになりました。 私の両親は広島出身で共に親族が被害を受けています。 私自身は映画や写真、話を通してしか原爆の惨状を感じることしかできませんが、「ヒロシマ・モナムール」を見ると、外国人がどのように広島をとらえていたのか理解できます。 また、ETV特集「原爆スラムと呼ばれた街で」を同時期に見ました。原爆スラムと呼ばれた基町が特集され、戦後の広島を理解するのに役立ちました。 広島関連の映画は「愛と死の記録」を始め、多くの秀作があるので時間があれば見ようと思います。

一方、「去年マリエンバードで(1961年、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞)」は映画としては難解な作品。 アラン・ロブ・グリエは芥川龍之介の「藪の中」を下敷きにして脚本を書きました。ココ・シャネルが衣装を担当しているので、映像的にも雰囲気がある作品になっています。 これらの2本の映画を見ると、ヌーベルバーグを代表する監督たちが日本の映画や芸術作品に大きな影響を受けていることが分かります。 戦後の日本映画界は輝いていたのですね。

ところで、日曜日に鎌倉の円覚寺に、フランス人の友人P君と小津安二郎の墓参りに行きました。彼にヴェンダースの「東京画」の話をすると興味を示していました。 さすがフランス人。映画好きですね。





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映画 「アデルの恋の物語」、「好奇心」、「五月のミル」
[2017/07/09]

フランソワ・トリュフォーの「アデルの恋の物語」、ルイ・マルの「好奇心」、「五月のミル」を見ました。 「アデルの恋の物語」はフランソワ・トリュフォーが古典主義への回帰を始めた作品。 原作はフランセス・ヴァーノア・ギールの『アデル・ユーゴーの日記』、ヴィクトル・ユーゴーの次女アデル(アデール)の狂気的な恋の情念を描いた作品です。 この作品のアデル役には後にフランスを代表するイザベル・アジャーニが起用されています。18歳の彼女はとても美しく、上手に狂気の女性を演じています。 アジャーニ自身、「この映画のおかげで今の私がある」と語っていますが、女優の運命は出合った監督で大きく変わるようです。

ルイ・マルの「五月のミル」は五月革命最中の南仏の田舎が舞台。 妻の死をきっかけに家族が集まり、どんちゃん騒ぎがあって、最後は老人が一人家に残るストーリー。 小津安二郎の「小早川家の秋」に影響を受けているようです。 ストライキで葬儀ができない、革命派に殺されるというデマを信じて森の中を逃げ回るユーモラスな描写は笑いを誘います。 「小早川家の秋」は「みんないなくったね、寂しくなるな」という祭りの後の静けさで映画は終わるのですが、 「五月のミル」では「遺産よりも、森や畑がある今の家がいい」と当初、家を売ろうとしていた家族の意見が逆転して、物語は終了します。 悶々としていた問題が解決した時のような心地よさがある面白い作品でした。これがフランス人の感覚かな。 フランス映画といえばヌーベルバーグが有名ですが、今まで見る機会があまりなかったので今回の留学をきっかけに、ヌーベルバーグの作品をたくさん見ようと思います。

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映画 「恋のエチュード」(1971年)
[2017/07/02]

この5か月間、イギリス関係の映画ばかり見ていたのですが、水曜日に約1年ぶりにフランス映画、フランソワ・トリュフォーの「恋のエチュード(1971年)」を観ました。
原作はアンリ=ピエール・ロシュの小説「二人の英国女性と大陸」。この映画は発表当時は感傷的だと批判され、興行的には失敗、トリュフォーはこの作品の後、観客受けをする作品を作り始めます。
舞台はウェールズ、トリュフォーがイギリス滞在を嫌がり、ノルマンディーで撮影した映画です。死の直前まで医者を呼ばないアンが亡くなるシーンのモデルは「嵐が丘」を書いたエミリーブロンテだと言われています。
不思議なのは、イギリス留学を終えて日本に帰国してフランス映画を見ると、今までよりも一層、イギリスとフランスの違いについて感じることができるようになったことです。映像を見るだけでイギリスが島国、フランスが大陸国を感じることができます。これから2か月間、フランスを知るために、なるべくたくさんの映画を見る予定です。

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