美術・音楽 2018年8月

「琉球 美の宝庫 展」
[2018/08/26]

2018年7月18日~9月2日
サントリー美術館

サントリー美術館で開催されている「琉球 美の宝庫」展に行きました。 琉球は現在の沖縄県、中世以降、日本と深い関係を持つ地域ですが、内地とは違った独自の美術・工芸的な発展を遂げてきます。 展覧会場は紅型を中心とした染色、中国・日本絵画の影響を受けた琉球絵画、螺鈿・沈金などの工芸、首里王府の尚家宝物の4つのブースで構成されています。 琉球美術・工芸の展覧会はめったに開催されないので、なかなか見ごたえのある展覧会で、 個人的には、美御前御揃(国宝)や黒漆雲竜螺鈿大盆など、螺鈿細工、沈金が見事な尚家の宝物が印象に残りました。
ところで最近、若い女性の間で小鹿田焼や壺屋焼の陶器が流行しています。 壺屋焼は沖縄の焼物ですが、それを見ると琉球が李朝や南蛮の影響を受けていたことがわかります。琉球の王家は中国、庶民は南蛮品を使用していたのでしょう。 中世から琉球は中継交易で栄えていますが近代に入ると軍事上、重要な位置にあるため現在のような状況(米軍基地問題)が生まれました。 交易が盛んな地域は紛争が多いという典型例。 イスラエルやパレスチナもそのような地域の一つです。琉球王府・尚家の人々は難しい政治を行っていたのだろうなと宝物を見ながら想像しました。 先日、翁長知事を失った沖縄県、これからも揺れそうですね。

写真:http://www.ohtabooks.com/qjkettle/news/2018/06/27134805.html
https://ameblo.jp/artony/entry-12392404054.html


「モダン・アート再訪」、「キノコ雲のある世紀・祈り」展
[2018/08/19]

2018年6月2日~8月26日
広島私現代美術館

広島私現代美術館で開催されている「モダン・アート再訪」、「キノコ雲のある世紀・祈り」展を観に行きました。 「モダン・アート再訪」ではミロやシャガール、藤田嗣治、イヴ・クライン、マーク・ロスコ、ウォーホル、 草間彌生など1930年代から90年頃までの近代美術を含むスタンダードな作品が展示されています。 半分くらいは日本人作家の作品ですが、展覧会を見ると20世紀美術の概要、潮流がわかります。 50年代から60年代初頭にかけては身体的な感じの作品が多く、60年代後半になるとポップ・アートの影響を受けて商業的になり、70年代になると作品がシンプルで観念的になります。 現代美術の流れを理解するにはもってこいの展覧会でした。
コレクション・ハイライト「キノコ雲のある世紀・祈り」は、 原爆に関連する作品を集めた広島市現代美術館の独自企画展。 蔡圀強や奈良美智などの作品が展示されていました。 祈りの対象として製作された像や慰霊碑の模型も展示されていたのが印象的です。 広島市ならではの展示品ですね。

写真:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/modern_art_revisited/


「ノーディレクションズ・ホーム」、「ドアーズ」、「ロジャー・ウォータース ザ・ウォール」、「ピンク・フロイド シド・バレット ストーリー」
[2018/08/12]

先週前半は雨だったので美術館にはいかず、家でミュージック関係のビデオを見ました。 「ノーディレクションズ・ホーム」(2005年)はマーチン・スコセッシがボブ・ディランの前半の活動を映像化した作品。映画を見るとディランがどのような環境でアメリカの音楽に触れ、有名になったかを知ることができます。映画の中で詩人のアレン・ギンズバーグが出てきますが、ギンズバーグ、ディラン、「卒業」のマイク・ニコルズ、「真夜中のカーボーイ」のシュレンジャー監督はすべてユダヤ系アメリカ人。1960年代のカウンター・カルチャーは主にユダヤ系アメリカ人によって主導されていたことがわかります。
「ドアーズ」(オリバー・ストーン、1991年)はロック・ミュージシャン、ジム・モリソンの生涯を描いた映画です。ジム・モリソンはドアーズを率い、コンサートで聴衆に向かって過激な挑発を行います。それはまさに体制に対する挑発、カウンター・カルチャーでした。
「ロジャー・ウォータース ザ・ウォール」(2015年)は、元ピンク・フロイドのメンバー、ロジャー・ウォータースが2010年~2013年に行った「ザ・ウォール・ツアー」公演を元にして作られた映画。このツアーは1979年に発表されたアルバム「ザ・ウォール」を元に構成されたコンサートで動員数が450万、興行収入が約500億円というけたはずれの規模でした。パンク・ミュージックが世界を席巻した1970年代後半、「ピンク・フロイドは古めかしい過去のバンド」というレッテルを貼られていましたが、2010年代になっても人気が衰えない。ピンク・フロイドの音楽が本物のロック・ミュージックだからでしょう。
「ピンク・フロイド シド・バレット ストーリー」(2004年)は、ピンク・フロイドを作った初期のバンド・リーダー、シド・バレットの物語です。ピンク・フロイドの設立当時の様子やシドが麻薬におぼれ精神錯乱に陥っていく様子が描かれています。私は昨年6月、ロンドンのビクトリア&アルバートで「ピンク・フロイド展」を見ましたが、この展覧会は日本にはまだ来ていません。招聘しないのでしょうか。

写真:https://ciatr.jp/movie/21043
https://www3.hp-ez.com/hp/yamanakahidetoshi/page3/bid-435536
https://filmarks.com/movies/77909
http://www.strange-ds.com/?p=8398


「ゴードン・マッタ=クラーク展」
[2018/08/05]

2018年6月19日~9月17日
東京国立近代美術館

東京国立近代美術館に「ゴードン・マッタ=クラーク展」を観に行きました。 ゴードン・マッタ=クラークは1970年代にニューヨークを拠点に活動した現代美術家です。 世界的に認められる前、35歳で夭折したため、日本では馴染みのない作家ですが、近年、彼の作品の再評価が始まり、世界的に注目されるようになりました。 クラークの代表作は取り壊し前の建物を切断した「ビルディング・カット」やアーティストによる食堂「フード」の経営など。 簡単に言うと、クラークはヒッピー後の都会のカウンターカルチャーを表現した作家。だからヒッピー文化とは一線を隔しています。
1970年代は冷戦でアメリカやソビエトの大国が小国に大きな影響を及ぼしていた時代、彼は大国としてのアメリカの物質的な文化とは違う面をアートで表現しました。 都会的なので映画でいうと、「イージー・ラーダー」よりは「卒業」や「真夜中のカーボーイ」の世界です。 村上春樹が描くような、ヒッピー後の都会のアートですが、今回の展覧会に展示された作品を見ると都会のアートも詩的、文学的だったことを感じることができます。 ただ、西海岸の長閑な雰囲気とは違って、ブルックリンなどの大都市は荒廃した様子が伝わってきます。 現代社会は経済や先端技術などを使って物質的、技術的な面ばかりを強調する作品が主流の時代。 その反動から、若いキューレーターなどはクラークを再評価するのでしょうか。カウンターカルチャーへの郷愁を感じる展覧会でした。

写真:http://www.onvisiting.com/2018/07/04/momat-20180619/
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/gmc/


上へ戻る   ホーム