美術・音楽 2018年2月

フランスの文化と芸術考
[2018/02/25]

ユニバーサル・クールジャパン

6か月間でのべ90回、美術館・博物館に行ったので、フランス文化・美術を肌で体感できたような気がします。 古代ローマの影響を受けたガロ・ローマン文化(南フランス)、ロマネスク様式の美術、中世のゴシック様式の美術、絶対王政の文化(北フランス)、パリで革命と近現代の文化・美術を見てまわりました。 体験を通して感じたことはフランス文化・美術には連続性があるということ。 体制が古代ローマからキリスト教会、絶対王政、革命政府に変わったとしてもフランスらしい文化の持続性を見て取ることができます。 現代美術も近代美術に持続して成立しています。一方、日本を見ると文化的な持続性が希薄です。 明治維新の前と後、太平洋戦争の前と後では一気に文化・美術に変化が起こり、天皇制の元号制度、自然災害(火事や地震)が加わるので話が一層、複雑になります。 それで、日本人は旧来の文化や歴史をすぐに忘れ去ってしまう国民性になった。 持続性のあるフランスの文化とない日本の文化(常に革新的)に優劣をつけるのは難しいのですが、逆に言うと日本人は革新的な生活様式を、持続的に維持している国民だということもできます(アメリカほどではありませんが)。 近年、日本は観光立国を目指して「クール・ジャパン」を提唱しています。
ちなみに、1年間でフランスに行く観光客数は平均して8300万人、日本に来る観光客数は大幅にアップした2017年でさえ約2900万人。 果たしてフランスのような観光立国になれるかどうか?この違いは、「歴史の連続性にある」と言っても過言ではないでしょう。 日本はアメリカ型の新しい物を信奉する消費社会ではなく、自国の歴史の連続性を意識する時代に入ったのかもしれません。


ポン・ドュ・ガール

アルル

アヴィニョン法王庁

ノートルダム大聖堂

ヴェルサイユ宮殿

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン

ランス 現代美術展

写真:https://i.ytimg.com/vi/sL7VShEq4qo/hqdefault.jpg


ルーブル美術館「フランス絵画」、ルーアン美術館、オルレアン歴史博物館・美術館
[2018/02/18]

「ビルヌーブ・レザヴィニョンのピエタ」

ルーブル美術館の「フランス絵画」を見ました。圧巻だったのが「ビルヌーブ・レザヴィニョンのピエタ」。素晴らしいの一言。 見た瞬間、鳥肌が立ちました。この作品は1834年、プロスペール・メリメがビルヌーブ・レザヴィニョンの教会の礼拝堂で発見し、1905年にルーブル美術館が購入した作品です。 その後の研究によって、ビルヌーブの美術館にある「聖母載冠」を描いたアンゲラン・カルトンの作品であることが判明。 フランドル派の影響を受けていますが、簡素な表現が感動を誘います。 このセクションには、古代ローマやプロヴァンスを描いた「廃墟のロベール」の異名を持つユベール・ロベールの作品も展示されています。 日本では馴染みのない画家ですが、近世の古代遺跡観光を発見した画家として特筆されるでしょう。 12日にはルーアン美術館に行って、フランス絵画を見ました。収蔵品も優品が多く、フランスは地方の美術館も充実しています。


ルーブル美術館の「フランス絵画」

ユベール・ロベール

ルーアン美術館

オルレアン歴史・考古学博物館

トー宮殿展覧会

ルーブル美術館に併設されている装飾美術館に行ったのですが、20~21世紀のコーナーが改装中、作品を見ることができませんでした。 残念…。仕方がないので、現代家具の企画展を見ました。これが意外と面白かった。 展示されている家具がキノコの形をしていて、形や色を見ていると「計算によって導き出されるデザイン」といった感じです。 キノコは小さな菌糸の集合体で数学的な構造を持っています。家具も関数によってデザインされる時代になったのでしょうか。
17~18世紀のコーナーは時代ごとに部屋が再現されています。 ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館は物を並べているだけですが、装飾博物館は部屋を再現して展示してあるす。


パリ装飾美術館

15日にル・コルビジェの設計した「サヴォア邸」に行きました。内装は抽象画(線や平面、らせんのデザインを組み合わせたコンポジション)のような雰囲気です。 各所に見所がある、格好良いたてものでした。


サヴォア邸

オルレアンなどの美術館に行ってジャンヌ・ダルクに関する美術品を観ました。ジャンヌは生前、各国の政治家たちに翻弄され、評価が定まりませんでした。 百年戦争が終わるとフランスを救った英雄として祀り上げられ、ナポレオン時代に再評価されます。ヴァチカンがジャンヌを聖者と認めたのが1920年。 フランス各地の美術館を廻ると、ナポレオン時代にジャンヌを題材にした作品がたくさん描かれたことが分かります。 ジャンヌが生きた時代はルネッサンス前夜。中世は宗教の時代、彼女は宗教的熱狂が国家を救う最後の輝きだったのでしょう。

パリ滞在の最後にパリ・ガルニエ(オペラ座)で、チャイコフスキーのバレエ「オネーギン」を観ました。 「オネーギン」はプーシキンの小説を1965年にジョン・クランコがチャイコフスキーの曲を使ってバレエ化した作品(3幕6場)。 クランコの代表作で物語バレエの傑作です。オネーギン役のダンサーが上手で、人間の感情を身体でうまく表現していました。 パリ・ガルニエで見るバレエは他のバレエとは一味違う。 ちなみに、オペラ座の天井画はシャガールの作品、ロシアのバレエにぴったり合っています。


パリ・ガルニエ(オペラ座)

シャガールの天井画

バレエ「オネーギン」

国立考古学博物館、モーリス・ドニ美術館、コンデ博物館、シャンティイ大厩舎、ケ・ブランリー美術館、プティ・パレ美術館、市立近代美術館、ピカソ美術館、クレマンソー記念館、バルザック記念館、国立古文書図書館 モーツァルト「レクイエム」、ノートルダム大聖堂「バロック音楽コンサート」
[2018/02/11]

モーリス・ドニ美術館

サン・ジェルマン・アン・レーの国立考古学博物館、モーリス・ドニ美術館に行きました。 国立考古学博物館はガリア時代の遺物収集品ではヨーロッパ随一。収集品を見ると、旧石器時代からガリア、ウェルキンゲトリクスの時代に没入できます。 同じフランスでも古代ローマ時代、北と南では全く文化が違う。当時の北フランスは蛮族っぽい感じがします。 モーリス・ドニはジャポネズムの影響を受けて始まったナビ派の代表的画家です。ナビ派の絵は日本の浮世絵と印象派を融合させた様式です。 この時代、日本では文明開化、西洋絵画の模倣をしてました。 文化は外国の影響を受けながら変容していくものなのです。


国立考古学博物館

モーリス・ドニ美術館

ラファエロの「ロレートの聖母」

2月4日から7日までパリは雪だったで、先週は集中して屋内の美術館をまわりました。 シャンティイ城は広大な森の中にある、優美な外装、白と金を基調にした内装のお洒落な城です。 城内にはコンデ博物館、グラン・シャトー、図書館があり、多くの美術品、工芸品、書籍が展示してあります。 中でもグラン・シャトーにあるラファエロの「ロレートの聖母」は小さな作品ですが逸品。とても美しい作品です。 城を廻った後、馬に関する資料を展示する大厩舎にいきました。ここには馬と馬術、軍馬、競馬、娯楽、映画、スポーツなどに関する展示品があります。 西洋で馬術が本格化したのはオスマン・トルコに対抗するためだったとか。 軍馬のコーナーを見ていて、帝国陸軍に騎馬隊を作った秋山好古のことを思い出しました。きっと秋山も、この大厩舎を見て感動したのでしょう。


シャンティイ城

シャンティイ城 大厩舎

ケ・ブランリー美術館

ケ・ブランリー美術館はエッフェル塔の近くにあるアフリカ、アメリカ、オセアニアなどの民族美術を展示する美術館。 アラブ世界研究所を設計したジャン・ヌーヴェルが手掛けた建物はユニークで、館内には3500点の作品が展示されています。 アフリカ、オセアニア美術は日本では馴染みがないのですが、世界的に人気があります。とにかく、この地域の造形は奇抜で凄い。 ヨーロッパは観念的ですが、アフリカは身体的。展示品を見ていると、概念的な西洋美術に慣らされた感性が大きく揺らぎます。 それにしても美術館の外は吹雪、アフリカ美術鑑賞とは似ても似つかないシュールな時間でした。

プティ・パレ美術館

パリ市立近代美術館、プティ・パレ美術館、ピカソ美術館に行きました。 プティ・パレ美術館はパリの1900年前後(ベル・エポック)の美術品・工芸品を展示した美術館です。 時代を明確に体感できる美術館というのは好いですね。 一方、市立近代美術館は1937年のパリ万博に建てられた「パレ・ド・トーキョー」内にある近代産業を謳歌する美術館。 展示品を見ていると、この後、第二次世界大戦が起こることなど、パリ市民はまったく考えていなかったことがわかります。 ピカソ美術館は2度目なので、ゆっくり作品を鑑賞することができました。 改めて見るとピカソは色彩感覚が豊かですね。 ピカソの作品を見ていると、アンディーブのピカソ美術館に行ったことを思い出しました。


プティ・パレ美術館

パリ市立近代美術館

レオナルド藤田「横たわる裸婦」

ピカビア「恋人たち」

ブローネル「ブルトンの肖像」

デュフィ「電気の妖精」

マティス「未完成のダンス」

ダニエル・ビュラン「キャビネ・ド・パンチュール」

ドローネー「リズム」

ピカソ美術館

クレマンソー記念館には、彼に関する資料や収集品(エジプトや日本などに行った際に購入した美術品など)、モネの絵が展示されています。 親友のモネに睡蓮の連作を描くように勧めたのは、クレモンソーだったそうです。 寝室の調度品や机の上の書類、筆記具、日めくりカレンダーなど、亡くなった日(1929年11月24日)のまま保存されていました。すごいですね。
私はこれまでのバルザックの作品を読んだことがなく、記念館に来るまで、バルザックが喜劇(コメディ)作家であることを知りました。 コメディは人間の裏面や日常、社会的事件、問題を皮肉にして面白おかしく書く分野。 私はコメディ好きなので、帰国後、一生、借金取りに追われ続けたバルザックの作品を読んでみたいと思いました。
国立古文書博物館はスーピーズ公フランソワズ・ロワンの館内にある図書館。 ジャンヌ・ダルク、ルイ14世、マリーアントワネット最後の手紙、フランス人権宣言や第5共和政の憲法などが展示してあります。 また、建築関連の資料、サンロッシュ教会やシャンティイ城など観光した建物の図面などが展示がしてあるのが面白かったですね。


クレマンソー記念館

クレマンソー

バルザック記念館

バルザック

国立古文書図書館

3日の夜、マドレーヌ教会で「モーツァルトのレクイエム」、5日の夜、ノートルダム大聖堂でバッハとバロック音楽のコンサートを聴きました。 両方とも教会音楽なので、数日前に聞いた「ベートーベン第九」よりも、自然な感じで聞くことができます。 欲を言うと「モーツァルトのレクイエム」は、新古典様式のマドレーヌ教会より、ノートルダム大聖堂で聴きたかった。 教会で演奏を聴くとCDで聞く時よりも複雑な立体感や荘厳感が出ます。 ノートルダム大聖堂のバロック・コンサートはオルガンの伴奏と混声合唱、聖歌の世界で繊細で柔らかく、特に女性のソプラノ、アルトがきれいでした。


マドレーヌ教会

マドレーヌ教会でのコンサート

ノートルダムの夜景

ノートルダム大聖堂内でのコンサート

写真:http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/011/959/50/N000/000/001/125626337855416205650_clemansau.jpg
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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b5/Bach.jpg/220px-Bach.jpg


Ima博物館、ルーブル美術館(イタリア絵画)、フォンダシオン・ルイ・ヴィトン「МOМA展」、
マルモッタン・モネ美術館、ル・コルビジェ「ラ・ロッシュ邸」、ヴェルディ「仮面舞踏会」、ベートーベン「第九」
[2018/02/04]

アラブ世界研究所

アラブ世界研究所は、建築家ジャン・ヌーベルが設計した斬新な建物。 研究所内にはIma博物館が併設され、古代の陶磁器、5,6世紀頃のキリスト教やユダヤ教の遺物、数学、天文学、建築学書、測量器具、ダイヤモンドやラピスラズリなどの鉱物、アラブ出身の作家の現代美術作品などの展示品を見ることができます。 全体的にキリスト教関連、ユダヤ教関連、哲学関連の遺物が多いので、研究所はアラブ世界をキリスト教発祥の地としてとらえているのでしょう。 イスラム教関連の展示品はモザイクやコーラン、楽器や衣装など民族学的な感じ。 これを見るとフランス人が現在の中東をどのようにとらえているかわかります。 現代版十字軍みたいな研究施設です。


アラブ世界研究所


パリに来て、ルーブル美術館に行くのは5回目です。今回はイタリア絵画、フランス絵画の大作を見ました。 16世紀までのキリスト教絵画の登場するキリストや聖人たちは無表情ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチが登場すると、絵画様式が大きく変わります。ダヴィンチは美術の中に自然科学を取り入れた天才。
17世紀、カラヴァッジョの時代になると、幾何学的な画面構成から生首や身体のうねり(バロック様式)など、グロテスクな表現が主流となり、人間の生々しさが表現されるようになります。 日本でいうと室町時代の能面から、江戸時代前期の歌舞伎の隈取りに変化したような感じでしょうか。

革命後のダヴィッドやドラクロアの大作を見ると、フランスの近代史を視覚的に体験できます(それがナポレオンの意図したこと)。 フランスは他国に先駆けて、いち早く近代国家を形成したのですが、イタリアはこの時期、地方ごと(国ごと)に分かれていたので国家的な絵画は存在しません。 体制の違いによって、絵画も大きな影響を受けるのですね。


16世紀までのキリスト教絵画

レオナルド・ダ・ヴィンチ

カラヴァッジョ

ダヴィッド

ルイ・ヴィトン財団美術館

フォンダシオン・ルイ・ヴィトンの「МOМA展」を観ました。 フランスでアメリカ現代美術の展覧会を見ると、アメリカ人の歴史観、感性がはっきり理解できます。 同じ現代美術館でもポンピドー・センターでは歴史のムーブメントを常設展を通して感じることができるのですが、МOМA展ではそれが感じられない。 多くの作品が大味で、歴史の無い国の現代美術が何かを知りました。
マルモッタン・モネ美術館は美術史家P・マルモッタンの邸宅を改装した美術館。内装も豪華で、芸術作品と共に一族の肖像画、調度品などが展示されています。 何といっても、この美術館の目玉は、モネの息子ミッシェルが寄贈したモネ・コレクション。「印象、日の出」をはじめ、モネの代表作が揃っています。 また、女流印象派画家、ベルト・モルゾの作品もあり、彼女が家族を描いた作品は見ていると心が和みます。
2つの美術館を見た後、ブローニュの森を通って、コルビジェが設計したラ・ロッシュ邸へ行きました。 ラ・ロッシュ邸は吹き抜けやギャラリーがあるモダンな建物。最近の建築はデザイン重視で人間の感覚に訴えかける配慮がない建物ばかり。 コルビジェの建物は実用的でありながら、おしゃれな感覚があります。機能性と感覚的なデザインを両立させたコルビジェの建物は素晴らしいの一言。 私はル・コルビジェの建築が大好きです。


ウォーホール

リキテンシュタイン

「МOМA展」会場風景

マルモッタン・モネ美術館

モネのコーナー

「印象、日の出」

「ルーアンの大聖堂」

モリゾの作品

ブローニュの森

コルビジェ「ラ・ロッシュ邸」

ヴェルディ「仮面舞踏会」

31日、オペラ・バスティーユでヴェルディの名作「仮面舞踏会」、2月1日、マドレーヌコ教会でパリ交響楽団の「ベートーベン第九番」を観ました。 「仮面舞踏会」は、道化役オスカーの演技や歌が上手で、歌曲では「地獄の王よ」「あの草を摘みとって」「私の最後の願い」が良かった。 白鳥の湖の道化やレ・ミゼラブルのテナルディエ夫妻もそうですが、オペラでは必ず道化が登場して場を和ませます。 一方、マドレーヌ教会の「ベートーベン第九番」は、教会内に音が響き渡って壮大な感じですが、どこか大味。 ナポレオンの好んだ新古典主義の教会と真面目なドイツ風の曲目が重なって硬い感じのコンサートでした。会場で曲の雰囲気も大きく変わるのです。

写真:https://d4ulp78sfpeko.cloudfront.net/thumb/pictures/14/97/149709/Ballo-in-Maschera-c-Agathe-Poupeney-01.jpg


オペラ・バスティーユ

マドレーヌ教会

「ベートーベン第九番」

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